指針や糸などチューニングに関する部品を取り外したので、今回は問題のエアバリコンを取り外して修理することにしました。エアバリコンはたくさんのアルミの羽が接触しないように交差する仕組みになっています。その羽同士の隙間は、ポリバリコンと異なり薄紙一枚がかろうじて通るほどの空気層です。何かの拍子に羽と羽が接触するとバリコンの役割をしません。エアバリコンはそのような精密部品です。
エアバリコンに取り付けられたプーリーを取り外す
最初に、バリコンの軸に取り付けられているプーリーを取り外しました。次に、バリコン自体を基板から取り外しました。取り外すときにまず3個のネジを外します。次に、アース,OSCコイル,同調コイルに繋がる線を半田ごてで外しました。
3個のネジを外す アース,OSCコイル,同調コイル側を外す
傷めないように慎重にエアバリコンを取り外すと、故障原因とみられるエアバリコンのショートの状況をテスターで確認しました。バリコンを回しながら抵抗値を測ると、テスターが激しく揺れました。本来ならば常に抵抗値が∞でなければなりません。そして、バリコンを回しながら耳を澄ますと「シャラシャラ」と羽が接触する音が聞こえました。
バリコンを回しながら抵抗値を測ると、テスターが激しく揺れる
エアバリコンはとても小さな精密部品です。羽の状況は裸眼ではとても確認できません。そこで、ルーペを使って羽の状況を調査しました。すると、一か所だけ羽が偏っている個所を見つけることができました。この個所で羽が接触しているようです。
羽と羽が接触していると思われる個所(ルーペで観察)
そこで、偏っている羽の個所を細いドライバーの先端で注意深く治しました。このようにドライバーで羽を微細に動かしたのは、高校生の頃に真空管ラジオのエアバリコンの偏りを直して以来のことです。真空管ラジオのエアバリコンよりも微細な羽ですのでとても目が疲れます。微妙な偏りを直した後、羽全体の隙間を動かすネジを回してなんとかエアバリコンの羽接触の故障を直すことができました。エアバリコンを回しながら、テスターで抵抗値を測ると常に∞です。接触時に発生する「シャラシャラ」音も聞こえません。エアバリコンは「絶縁が空気」の致命的な構造であるため、一気にポリバリコンに取って変わったのでしょうね。
羽の偏りをドライバで直す 羽と羽の隙間を微妙に調整
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古い松下製トランジスタラジオ AT-175Jの修理(3)
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