小雨が降って農作業ができないため、修理途中の古いトランジスタラジオを引き続き修理しました。
このラジオ、ひととおり音が出るようになったためトラッキング調整をしようと思います。まずは、SGで1000HzでAM変調された455kHzの電波を注入してシグナルトレーサーで中間周波増幅部をチェックしました。その結果どの部分も、想定内範囲でした。なお、中間周波トランスはロウで固めてあるためさらに調整はできませんでした。
オシロスコープで確認するときれいな波形が出ますので、無理して調整することもなさそうです。古いトランジスタラジオでは、無理するとこのトランスのコアが欠けることがあるためです。
シグナルトレーサーで高周波部の各部をチェック
次にトラッキング調整する局部発信コイルのコア調整部やトリマーコンデンサの位置を確認しました。それらを覆う金属板を外して、その場所を確認しました。調整しやすいように中波用と短波用が綺麗に並んでいました。
トラッキング調整前に金属板を外す 上下にトリマーコンデンサなどが並ぶ
並んでいた調整用のネジ類を見ると、出荷時にネジ固定用のネジロック剤が塗布されていたようです。しかし、修理か何かで無理して回した痕跡がありました。特に中波用の発信コイルのコアネジが無残にもネジ山がつぶれていました。平ドライバーで回らなかったため、ペンチで摘まんで回したようです。こうなると、もう平ドライバーで回すことができません。
〇:ネジ山がつぶれた中波用発信コイル、平ドライバーで回せない
修理時に調製することを考えると、ネジロック剤を使うのは止めた方が良いようです。とは言え、私がテレビ製造工場で働いていた時、このネジロック剤で止めていたことを思い出しました。幸い局部発振コイルのトリマーコンデンサと同調回路に平行のトリマーコンデンサは平ドライバーで回すことができました。局部発信コイルもペンチで摘まんで調整できました。
トリマーコンデンサの位置確認 オシロスコープで見た中間周波の波形
トランジスタラジオのトラッキング調整するにあたって、このラジオでは次のように制限がありました。バーアンテナの同調コイルがロウで接着していることです。このため、局部発信コイル側のトリマーコンデンサ,同調コイル側のトリマーコンデンサ,そして局部発信コイルのコアの三つしか調整に使えません。ちなみに、バリコンはトラッキングレスではありません。
ロウ付けされた中間周波トランス ロウ付けされて動かせない同調コイル
まず最初、中波のトラッキング調製をしました。次の三点の周波数がほど良く聞こえるように調整しました。600kHz,1000kHz,1600kHzです。主に、600kHzは局部発信コイル側のトリマーコンデンサで、1600kHzは同調コイル側のトリマーコンデンサで調整しました。これら三点の調整を何度か繰り返すと、どの周波数帯域も良く聞こえるようになりました。
A:局発トリマーコンデンサ,B:発信コイルのコア,C:同調トリマコンデンサ
上図A,B,Cの回路図上の位置 橙色は中波、黄色は短波
トラッキング調整の結果、低い方は525kHz〜高い方は1640kHzの範囲でラジオ放送が受信できるようになりました。規格は540〜1600kHzですので十分です。低い方がやや感度が良いようです。ただ、古いトランジスタラジオのためかサーと言う小さな雑音はボリュームを絞っても相変わらずです。以前直したgeneral製トランジスタラジオ6G630もやや雑音が出ていました。創世記のトランジスタはやや雑音が出やすいのでしょう。低周波増幅初段の2S14を低雑音用に取り替えれば改善すると思いますが、普段使わないラジオでもあり、実用上問題ないため止めました。
低い受信周波数525kHz 高い受信周波数1640kHz
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古い東芝製トランジスタラジオ 7TL-204Sの修理(6)
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