昭和30年代の製品だと思いますが、SONY製のトランジスタラジオTR-710があります。このラジオは、当時としては珍しく電源が3Vです。当時のラジオのほとんどは、電源が9Vか6Vです。同じ出力ならば電圧が高い方が電流が少なくできます。家庭用電源100Vの送電に何千ボルトもの高圧電圧を使う原理です。電流が多い出力トランスはどうしても大きくなるので、小型化が難しかったのではないかと思います。よくは分かりませんが、このラジオを開発するにあたって、電流が多くても使える小型出力トランスが開発されたのでしょう。
革が破れて、色もくすんだトランジスタラジオTR-710
ユーザーとしては電池が少ない方がありがたいので、3V電池が売りだったのではないかと思います。ところで、このラジオ、見た目がとても悲惨です。ラジオの筺体を覆う革のあちこちが破損しています。特に、ラジオの片面側とアンテナ収納部が大きく破損しています。なんとか革も修復できればと思います。
革の片面側が大幅に破損 アンテナ収納部も破損
革から取り出したラジオ本体は、全体的にくすんだ色をしています。長年の使用によってくすんでしまったのでしょう。このくすみを取るには一度、筺体を分解して無水アルコールなどで磨く必要があると思います。磨くのはラジオが動作するようになってからにしようと思います。
全体的に色がくすんだラジオ本体
ラジオの裏蓋を外すと回路基板が見えます。使われているトランジスタや中間中間周波トランスなどの部品をざっと調べると、標準的な作りのよう見えます。また、使われているバリコンは、エアバリコンではありません。トランジスタラジオが開発された当初、真空管ラジオもまだ現役でした。このため、トランジスタラジオにエアバリコンがよく使われていました。しかし、だんだんポリバリコンなどに変わっていきました。
ポリバリコンが使われ3V電源、トラッキング調製し易い構成
電源に3Vをつないで故障箇所を調べてみました。症状は、電源を入れても音が出ないことです。しかし、ラジオを叩くと音が出ることがあります。音が出てもガリがとてもひどいことと、放送が受信できても音がとても小さいです。音が出ないのでは電池か何かの接触不良が考えられます。ガリがひどいのはほとんどがボリュームです。この手のラジオは、交換するボリュームがなかなか手に入らないので困ります。音が小さいのはコンデンサの容量抜けが考えられます。感度が悪いのかも知れません。次に、電子回路に使われているトランジスタなどの素子を調べてみようと思います。
安定化電源を3Vに設定 3V電源をラジオにつないで調査
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古いSONY製トランジスタラジオ TR-710の修理(1)
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