史跡巡りウオーキングの予定日でしたが、台風の影響で天候がすぐれず延期としました。そのため遅れていた草刈りをしたり、依頼されていたトランジスタラジオを修理をしたりしました。
このトランジスタラジオはSさんが郷土館に持ち込んだものです。電源を入れても全く音が出ない故障です。郷土館ではおいそれと修理できません。そのため、修理するための道具や装置が揃っている我家に持ち帰りました。まずは、トランジスタラジオの裏蓋を開いて回路基板を調査しました。私は修理に入る前に、ラジオの状態を調べることから入ります。まずは回路の能動素子(トランジスタ)を調べました。
〇はトランジスタ(トランジスタラジオ回路基板上の能動素子)
このラジオに使われているトランジスタを見ると、日本工業規格JISの番号(2SAxxxなど)ではありませんでした。松下電器ががヨーロッパPhilipsとライセンス契約して製造したトランジスタではないかと思います。当時日本の技術ではトランジスタを作ることができなかったのです。日本で唯一トランジスタを作ることができたのはSONYです。その後のSONYの発展は、自前でトランジスタを製造できたことが理由です。SONY以外はアメリカやヨーロッパから技術を導入していました。
ラジオ AT-175jrの外観 裏蓋を外して二枚開き 壊れたイヤホン挿入箇所
使われていたトランジスタは7個です。このトランジスタラジオで珍しいのは、局部発信が自励式ではなく他励式であることです。当時高価で貴重なトランジスタを1石減らすことができる自励式がコスト的にはとても有利です。しかし、電子回路的にラジオ放送を安定して受信できるには他励式が有利です。安くて小さなポケットラジオには、自励式の6石トランジスタが標準となっています。一方で、電波を安定的に受信する必要がある通信用ラジオなどには、1石多くトランジスタが必要な他励式が採用されています。つまり安価なラジオには自励式、性能重視のラジオには他励式が使われていました。
イヤホン端子とスピーカー端子 壊れていたイヤホン端子の金具A,B
さて、このトランジスタラジオを二枚開きにして外観的な破損個所を探してみました。すると、イヤホン端子の一部が壊れて欠損していました。イヤホン端子の接触不良で音が出ない故障は意外と多いものです。上画面の金具AとBを接触させると、わずかに音が出ました。このラジオの音が出ない第一の原因がイヤホン端子の破損でした。ただ、金具AとBを接触すると無音ではないのしてもあまりに音が小さいので、まだまだ故障個所がありそうです。このラジオの回路図があったので、次回は電子的な故障原因を探そうと思います。
このラジオの電子回路(高周波部) このラジオの電子回路(低周波部)
↧
古い松下製トランジスタラジオ AT-175 Junior の修理(1/x)
↧