毛糸を紡ぐ前に、カーディングと呼ばれる作業があります。カーダーを使って、羊毛(ウール)をほぐすと同時に、梳(す)いて繊維の方向を揃える作業です。ちなみに、江戸時代まで日本では羊を飼育していなかったようで、これらの道具は明治時代にヨーロッパから伝わってきました。日本では絹を除いて綿やからむしなどの植物繊維を主に使っていました。弓の弦ではじいたり、細い棒を打ち付けたりして、それらの植物繊維をほぐしていました。
カーダーで羊毛をほぐすと同時に、梳(す)いて繊維の方向を揃える
まずは、カーディングする羊毛を用意します。多すぎるとうまくカーディングできません。たくさんある羊毛から、1掴み分の羊毛を取り出します。その羊毛を最初はふかふかになるようにほぐします。ある程度ほぐれたら、繊維の方向を揃えるように梳(す)きます。
棘間のゴミを取る 1掴み分の羊毛 カーダーに載せる
カーダーには無数の針状の棘が打ち付けてあります。その棘を羊毛に引っ掛けるようにしてほぐします。棘は無数にあるため、カーディングには意外に腕の力が必要です。カーダーを持っていない方は、左手で羊毛を掴んで右手に持った櫛で梳(す)いてもかまいません。高価ですが、ハンドルを回しながらカーディングするカーダーもあります。
ほぐしつつ繊維の方向を揃える 繊維の方向を揃え終わる
カーディングが終わると、ふわふわになったなった羊毛をカーダーから取り出します。普通ならば、この状態ですぐに紡ぐことができます。私の場合は、その後に一手間かけています。その理由は、私が使っている田布施農工高校の羊の毛の特徴からきています。毛の長さが均一ではないこと、毛がカールしているため絡みつきやすいこと、やや毛が硬く太いなどの特徴があります。こればかりは、羊毛を取るために飼育されている羊ではないので仕方ありません。
カーダーから毛を取る フワフワの羊毛 細く引き伸ばす
その一手間とは、カーディングされた羊毛を引き伸ばすことです。硬くてカールした羊毛は、注意しないと太い毛糸になりがちです。連続して細い毛糸を紡ぐため、手元から繰り出しやすいように引き伸ばしておくのです。工業的に毛糸を生産するラインも、毛糸になる直前までロールで細く引き伸ばしています。次はいよいよ紡ぎの工程に入ります。
手元から羊毛を繰り出しやすいように引き伸ばす
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羊の原毛,紡ぎ,染色,そして織り 4/x (カーディング)
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