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Channel: 東京里山農業日誌
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田布施町 光った古代の光、ひかり観音の科学的実証(その1)

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 今年の夏、田布施町のひっかり観音(又はひかり観音)民話の実証実験をしました。その要旨を簡単にまとめたものです。

 田布施町西部の呉麓山九合目付近に「ひっかり観音」と呼ばれる自然石があります。田布施地方史研究会会誌第111号のふるさとの民話・伝説(五)に、その自然石について次のような民話が収録されています。「山麓一帯が海だったころに朝日が射すと、この自然石がピカリと光った・・・・」と。「山麓一帯が海だった」頃とは、千年以上前の古代において田布施町が海だった頃の話です。この民話は千年の時を超えて引き継がれた話なのです。
 この自然石の話が単に作り話ではないことに気が付いたのは、2013年3月22日、呉麓山ウォーキングのための事前調査に行った時のことです。西山林道のひかり観音石碑がある場所から頂上に向かいました。頂上に向かう途中にこの自然石がありました。この時初めてこの石を見ました。この自然石は、縦約1.6m横約5mの巨大な鏡のような一枚岩でした。不思議なことに東を向いており、わずかに上に向きに傾斜していました。この一枚岩は苔が生えており汚れていました。もし、この一枚岩が汚れておらず綺麗だったら、そしてもしこの岩の前に生えている樹木が邪魔をしなかったら、朝日がこの岩に当たり反射した光が地表から見えたはずと気がついたのです。

     ひっかり観音(自然石)            苔を取り擦ると、汚れが落ちツルツルに
 

 そこで、朝日の反射光が地表から見えるかどうかを検証するため2013年2月12日、その自然石を正確に計測しました。その結果、場所は北緯33°57'35"で、東経131°59'53",自然石が向いている方角は東を0°とするとどの面もほぼ-15°,傾斜角はどの面もほぼ70°(水平面に対して)でした。横5m縦1.6mほどの巨大な岩面が、平らで同じ方角を向いて,しかも同じ傾斜角でした。面白い事に、この自然石の真東の直線上に国森古墳と八坂神社があることも分かりました。
 この自然石の傾斜角から、太陽高度が約40°の時に反射光が地表に当たるこことが分かります。ひっかり観音の北緯は33°57'35"で、東経は131°59'53"です。この情報から太陽高度の動きを求めると、下のようにグラフになります。下の黒グラフは冬至、中間は春分秋分、そして上の赤グラフは夏至を表しています。このグラフを見ると、当然ながら冬至は最も高度が低い天空のコースをたどり、夏至が最も高度が高い天空のコースをたどります。このグラフから、夏至の時は8:30頃に高度40°になり反射光が見えることが分かります(下図の橙色〇マーク)。

                          年間の太陽高度グラフ

      
 次に、田布施町のどこにいれば反射光が見えるかなど計算しました。
計算上は、
①5月20日前後か7月20日前後
  下の橙色左矢印から朝日が入り、上の橙色右矢印方向に反射。
②6月20日前後
  下の赤色左矢印から朝日が入り、上の赤色右矢印方向に反射。
A地点は、6月25日に反射光を実際に観測した地点。
緑線はひっかり観音の真東の方角、黄線はひっかり観音が向いている方角。

                朝日が入射する方角と反射する方角
 

 ひっかり観音からの朝日の反射光が本当に見えるかどうかを確認するため、2014年6月18日にひっかり観音の自然石に15cm x 20cmの鏡を張り付けました。なお、この程度の小さな鏡でも、反射光が5km離れた所からでも十分観測できることを2014年1月31日に確認しています。
 そして、6月25日、城南の宿井団地でひっかり観音からの朝日の反射光を実測しました。8時半頃にぼんやりと明るかった光が、8時 47分頃から急に光が強くなりました。そして約3分間もの間、強い光が輝き続きました。48分頃に光の中心点が通過したようです。

                実測したひっかり観音からの反射光

 天文学の知識を元に計算して、光が見える場所や時間をおよそ特定しました。今回、その計算結果がほぼ正しかったことが分かりとても嬉しく感じました。計算上のことですが、田布施中心街より城南の方がより強く、しかも長い時間光ると思われます。これは、ひっかり観音が城南の民話として残っていることと関係があるかも知れません。
  来年2015年は、ひかり観音の自然石に付いた苔やゴミなどを取り除いて磨こうと思います。そうすれば、鏡を取り付けなくても光が見えるようになるはずです。その光こそが、古代の田布施に住んでいた人々が見た光ではないかと思います。岩は微妙な凹凸があるため、鏡より広範囲に光が見えるはずです。なお、田布施町地方史研究会会長のH氏より、磨く前にお祓いをした方がよいのではないかとのアドバイスをいただきました。約千年もの間封印された光です。そのようにしようと思います。


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